後生だ、けだものども鳴らせ!

鳴らせ!鳴らせ!鳴らせ!

お前たちは三つでひとつの生き物

矢を放て、火を放て、吠え声を上げろ!

天高く太陽が落っこちるまで

たかくたかく吹き上げろ、静謐な死を!

私の声が聞こえたならば、ワンと一回!

 

……音が遠くから聞こえた。金属に近い、硬質な音である。ひどく耳障りというほどではないが、ィイン……と低く響く様子は異様であった。私はそれを観測すると、これは実在するものなのだろうか、と考えた。もしかすると、私が観測しているから見えるだけの存在で、実際、音などどこからも聞こえていないのではなかろうか?そんなことを考えていると電話が鳴った。私が受話器を上げ耳に当てるとハローと声がしたので、私は電話のベルが本当に鳴っていたことを知った。かくして、世界は共有することで実在の証明を得る。集団で見る幻覚でない限りは。そこで私は家から出て、「妙な音が聞こえていますよね?」と近所の主婦に声をかけてみたのだった。

 

鳴らせ!鳴らせ!鳴らせ!

肋骨の上をすべるバイオリンの弓が終わりの音を奏でている。

さあ!準備をせよ!風呂敷を取り出せ!あまりに広げすぎたお前たちの大ボラを、畳め!畳め!畳め!

 

愉快である。三匹のけだものどもはヨダレを垂らして破滅をよろこび、好物の悪魔が湧き出るのを待っている。

悪魔の肉は甘い。

こいつらほとんど中毒で、それなしでは生きてゆかれないようになってしまった。

それでも私のかわいい犬ッコロ、せいぜい働いておくれ!

 

世界の終わりのカーニバル、せいぜい陽気にいかがでしょうか。

どこにでも転がってる幸福を尊べ。

夕焼け小焼けで死が来たる。

後生だ、けだものども!

 

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【アポカリプティックサウンド】2016/03/02